【雇用保険】加入条件・メリット、給付金の種類を詳しく解説

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雇用保険

給付制度とは?

雇用保険料は会社員の場合、毎月の給与から差し引かれているのをご存知でしょうか。転職を経験したことがある方は、ハローワークで手続きをして給付金を受給した経験があるかもしれませんね。

今回は働いている人は知っておきたい、雇用保険の仕組みについて解説します。

雇用保険の仕組み 

雇用保険とは?

雇用保険は、事業主が労働者を雇用する場合に必ず入らなくてはいけない保険です。労働者が失業した場合など、労働者の生活や雇用の安定、求職活動を安心して行うことができるように給付金を支給します。

雇用保険は失業時の給付金支給だけではありません。

例えば、教育訓練を受講した場合に受講料の一部を受給、育児休業や介護休業をした場合に給付金が支給される制度です。失業の予防や雇用状態の改善、労働者の能力の向上なども目的となっています。

失業保険は

  1. 失業等給付・・・求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付
  2. 育児休業給付
  3. 雇用保険二事業・・・雇用安定事業、能力開発事業

上記の3つに分かれています。 

雇用保険の加入条件は?

雇用保険に加入するためには、次の3つを満たす必要があります。

  1. 所定労働時間が1週間当たり20時間以上であること
  2. 31日以上の雇用が見込まれていること
  3. 学生ではないこと(夜間や定時制などの学生は対象になる)

1日5時間週4日のパート勤務も対象となります。個人事業主(フリーランス)や法人の役員などは適用されません。

雇用保険に入るメリット

日本で雇用保険に加入し、条件を満たしている場合、

  • 失業給付
  • 育児・介護休業給付
  • 再就職手当
  • 教育訓練給付
  • 雇用継続給付
  • 就職支援

などを受けとることがができます。

雇用保険に加入することで、失業や休業時の経済的な不安を軽減し、スキルアップや再就職をサポートする仕組みが整っています。これにより、安心して働き続けることができる環境が提供されます。

失業等給付とは?

主な手当は

  1. 求職者給付
  2. 就職促進給付
  3. 教育訓練給付
  4. 雇用継続給付

の4つに分かれます。

1.求職者給付

求職者給付とは、「基本手当」とも言われます。雇用保険に加入している労働者が定年や倒産、契約期間の満了などで離職した場合に生活の心配なく新しい仕事を探して再就職するために支給されるものです。

受給資格を満たしてハローワークに求職の申し込みを行い、求職活動を行っても就職できない場合に支払われます。その他にも、受給資格者が指定の公共職業訓練を受ける際に支給される技能習得手当や、病気やけがのために15日以上継続して仕事に就けない場合に支給される傷病手当などがあります。

2.就職促進給付

再就職したとき、基本手当を支給する残りの日数が所定給付日数の3分の1以上あり、支給要件を満たしていれば支払われるのが再就職手当です。

再就職した先の雇用形態が常用雇用以外の形で就職した場合に支給される「就業手当」や再就職した後の一定期間の賃金が離職前の賃金を下回る際に支給される「就業促進定着手当」などがあります。

3.教育訓練給付

労働者の能力開発やキャリア形成のため、また雇用の安定や再就職の促進のために受ける教育訓練の受講費の一部を支給する教育訓練給付金

教育訓練給付金には次の2つの給付金があります。

一般教育訓練給付金

支給対象者

  • 雇用保険の被保険者である期間が3年以上ある者(初めての支給の場合は1年以上)
  • 前回の教育訓練給付の受給から3年以上経っている者 など

支給額

  • 教育訓練にかかった費用の20%相当(上限10万円)
  • 4千円を超えない場合は支給されない

専門実践教育訓練給付金

厚生労働大臣が指定する業務独占資格・名称独占資格の取得を訓練目標とする講座、専門学校の職業実践専門課程、専門職大学院など、中長期的なキャリア形成を支援する講座を受講した場合に支給される給付金です。

支給対象者

  • 雇用保険の被保険者である期間が3年以上ある者(初めての支給の場合は2年以上)
  • 前回の教育訓練給付の受給から3年以上経っている者 など

支給額

  • 教育訓練にかかった費用の50%相当、年間の上限は40万円、通算120万円が上限
  • 4千円を超えない場合は支給されない

4. 雇用継続給付

日本では60歳以上になっても希望すれば65歳まで働くことが可能になりました。しかし、60歳以降は給与が減額されることがあります

その場合、減少額を補うために支給されるのが高年齢雇用継続給付です。また、雇用保険の被保険者が家族の介護のために休業し、要件を満たした場合受給できる介護休業給付もあります。

介護休業給付金の申請・支給は、介護のために休んでいる期間が終わってからになるので注意しましょう。

育児休業給付とは?

育児休業給付は、育児のために仕事を休んでいる場合に受給できる給付金です。対象者は一定期間雇用保険に加入している加入者です。出産した女性だけではなく、配偶者が出産をした男性も対象者となります。

支給条件として、雇用保険の加入期間が1年以上あり、産休の後すぐに職場復帰せずに育休を取得している必要があります。育休の後、退職する予定の場合は受給することはできませんので要注意です。

雇用保険の保険料は、給与に一定の率を掛けて計算されます。具体的な計算方法と例を以下に示します。

雇用保険料の計算方法

雇用保険料は、事業主(会社)と被保険者(労働者)の双方が負担します。保険料率は、業種や年度によって異なる場合があります。

2024年度の一般的な保険料率

保険料率(2024年度)

一般の事業: 労働者負担分 0.3%、事業主負担分 0.6%(合計 0.9%)

計算方法

月額給与(基本給 + 各種手当)× 保険料率 = 雇用保険料

労働者負担分と事業主負担分

  • 労働者負担分 = 月額給与 × 労働者負担分の保険料率
  • 事業主負担分 = 月額給与 × 事業主負担分の保険料率
計算例

例1: 月額給与が30万円の場合

1. 月額給与: 300,000円
2. 労働者負担分の保険料率: 0.3%
3. 事業主負担分の保険料率: 0.6%

労働者負担分

300,000円 × 0.003 = 900円

事業主負担分

300,000円 × 0.006 = 1,800円

合計保険料

– 労働者負担分: 900円
– 事業主負担分: 1,800円
– 合計: 2,700円

例2: 月額給与が50万円の場合

1. 月額給与: 500,000円
2. 労働者負担分の保険料率: 0.3%
3. 事業主負担分の保険料率: 0.6%

労働者負担分

500,000円 × 0.003 = 1,500円

事業主負担分

500,000円 × 0.006 = 3,000円

合計保険料

– 労働者負担分: 1,500円
– 事業主負担分: 3,000円
– 合計: 4,500円

注意点

  • 雇用保険料は給与から天引きされるため、労働者の手取り給与は保険料分減少します。
  • 保険料率は毎年度見直される可能性があるため、最新の情報を確認することが重要です。
  • ボーナス(賞与)にも雇用保険料がかかる場合がありますが、通常は給与と同様の計算方法で算出されます。

このように、雇用保険料は給与に保険料率を掛けて計算され、労働者と事業主がそれぞれの割合を負担します。

社会保険との違い

雇用保険と社会保険の違いはどのようなものがあるのでしょうか。分かりやすく表にまとめてみました。

雇用保険 社会保険
対象者 雇用されている労働者 企業で働く労働者およびその扶養家族
構成 失業給付、育児休業給付、介護休業給付、教育訓練給付など 健康保険、厚生年金保険、介護保険
目的 失業した際の生活を支援し、再就職を促進

労働者のスキルアップを支援し、雇用の安定を図る

病気やけが、介護、老後の生活などのリスクに対する保障を提供し、健康で安定した生活を支える
給付内容 – 失業給付: 失業中の生活費を支援。
-育児休業給付: 育児のための休業期間中の生活費を支援。
– 介護休業給付: 介護のための休業期間中の生活費を支援。
– 教育訓練給付: 職業能力を高めるための教育訓練費用の一部を支援。
– 再就職手当: 早期に再就職した場合の奨励金。
– 健康保険: 病気やけがの治療費を一部負担。出産手当金、傷病手当金も含まれる。
– 厚生年金保険: 老後の生活費を支援する年金給付。障害年金や遺族年金も含まれる。
– 介護保険: 高齢者や要介護者の介護サービス費用を一部負担。
加入条件 主に雇用されている労働者が対象で、一定の労働時間や雇用期間を満たす必要がある 主に企業で働く労働者が対象で、一定の月額給与基準を満たす必要がある。介護保険は40歳以上の全ての人が対象

このように、雇用保険と社会保険はそれぞれ異なる目的と範囲を持ち、労働者の生活を多方面から支援するための制度です。

雇用保険の対象外となるケース

雇用保険対象外となる主なケースは以下の通りです。

1. 短時間労働者
1週間の労働時間が20時間未満の場合

2. 短期間の雇用
31日未満の雇用期間が明確な場合

3. 学生
所定労働時間が週20時間以上であっても、昼間学生(高校生、大学生など)は原則として雇用保険の対象外

ただし、卒業見込みで就職内定を受けた場合や、夜間学生で昼間に働いている場合などは対象となることがあります。

4. 専業主婦(主夫)や家族従業者
個人事業主の配偶者や家族従業者であり、事業主と生計を一にする場合

5. 外国人労働者
短期滞在ビザや観光ビザで就労している外国人労働者

ただし、適法に就労している場合(留学ビザで資格外活動許可を受けている場合など)は対象となります。

6. 役員
会社の取締役など、役員としての立場にある者

ただし、役員であっても実質的に従業員と同様の働き方をしている場合には対象となることがあります。

7. 高齢者の特例
65歳以上の新規雇用者

ただし、継続雇用される場合は対象となります。

特例や例外

特例的に加入する場合

例外的な措置として、特定の条件を満たす場合には、上記の対象外となるケースでも雇用保険に加入できる場合があります。

例えば、65歳以上の高齢者でも、一定の条件を満たせば高年齢継続被保険者として雇用保険に加入できることがあります。

これらの条件により、雇用保険の対象となるかどうかが決まります。労働者として働いている場合でも、勤務形態や労働時間、雇用期間などの条件によっては対象外となることがあります。

雇用保険

雇用保険の加入条件を再度チェック

まとめ

雇用保険の仕組みについて解説をしました。労働者としては、失業した時や休業した時に給付金を受給することができ、生活の心配をしなくて済むのはとても重要なことですね。

雇用保険の仕組みを知ることで、いざという時に自分が受給できる給付金はどのようなものがあるか確認しておくことが大切ではないでしょうか。